舐達麻の逮捕について -HIPHOPが大衆を吸収するということ-
舐達麻の逮捕という衝撃でも何でもないニュース
先日、HIPHOPクルー「APHRODITE GANG」の中核を担うグループ、「舐達麻」のメンバーが逮捕された。
大麻所持疑いラッパー逮捕 「舐達麻」メンバーら9人 - 産経ニュース
逮捕されたのは、バダサイクッシュ以外の2人、ジープランツとデルタ9キッド。バダサイはソロ曲を数多く発表しているため、彼らの音楽が完全に途絶えることはない。
過去に逮捕歴がある彼らからすれば、釈放後の活動に支障をきたすことも考えにくい。
そう、舐達麻をある程度知っている人間からすれば、このニュースは衝撃でもなんでもない。HIPHOP関連のアーティストが逮捕されるなんて、珍しい事ではないからだ。
バトルヘッズの間でも有名な、SIMON JAP、Amateraus、漢.aka.GAMI、梵頭なども、逮捕されたとき何も衝撃はなかった。普通に彼らは帰ってきて、HIPHOPシーンで活躍している。
舐達麻の場合も同じだろうと、考える。
大衆へのHIPHOP人気
フリースタイルダンジョンの人気やCreepy Nutsの台頭によって、日本におけるHIPHOPの大衆化は進んでいるように見える。
AbemaでのMCバトル配信などからも、その様相を見て取ることが出来るだろう。
では、「大衆化する」「人気になる」とはどういう意味なのだろうか。
有吉は「売れるとはバカに見つかる事だ」と述べていたという。
この格言は色々なネット言説で擦られているわけであるが、このHIPHOPの状況にも照らし合わせることが出来るのではないか。
フリースタイルダンジョンが人気になったのは、HIPHOPという音楽が人気を博したからではない。
事実、フリースタイルダンジョン中の1コーナー「ダンジョン ライブ」でまともにライブを見ているネットユーザーは少ないのではないだろうか。
そこに存在するネットユーザー、「大衆」は、ネットの論破対決で西村博之の論調に心酔するような人々だろう。
口喧嘩の中で、どのように相手の裏をとるかみたいな攻防戦を見るため、フリースタイルダンジョンを楽しんでいるのではないか。
ライミングが「踏めばいいんでしょ」みたいな形で、短絡的に理解され始めたのも、大衆化の一側面だろう。
大麻と大衆
そして、舐達麻の人気。逮捕。ニュースでは「大麻を推奨するような楽曲」という誤認識。
舐達麻が大麻を推奨しているわけでも何でもないことは、HIPHOPの音楽性を理解していれば分かるはずだ。
舐達麻は、彼らの当たり前のライフスタイルを歌にしているに過ぎない。ドラッグに縁のない生活を送っている人からすれば、完全な他者なのだ。
その他者像の存在を知ることが出来て、色々な側面から世の中を見ることが出来るようになると良いと思う。
しかし、「ドラッグを摂取しているのが格好いい」「大麻いけてる」という「大衆」の間違った理解が広まるようになってしまった。
このドラッグ自体への礼賛というものは、何のかっこよさもない。所謂「ダサい」と言われてしまうものだろう。
「そういう文化が好き」という点だけで割り切っておくのが、一番。
ただ、「HIPHOPが人気になる」というのは、そういう形で割り切れない人間が取り込まれるという事と、ニアリーイコールなのかもしれない。